第53期 株主通信サン電子株式会社

jpx standard 証券コード:6736

CEOメッセージ MESSAGE
CHIEF EXECUTIVE
OFFICER

テクノロジーを軸に、
国内事業で培った技術やノウハウとグローバルから
得た新たな技術・人財交流を融合させながら
エリアにとらわれないビジネス展開で成長を目指す

代表取締役社長内海 龍輔

 第53期は、ナスダック上場の持分法適用関連会社Cellebrite社の株価上昇を受け、デリバティブ評価損による持分法損失の計上等により、大きな経常損失を計上することとなりましたが、この影響を除くと、厳しい環境にありながらも、サン電子の実力の成果として、着実に増収増益を果した1年となりました。堅実な黒字経営が軌道に乗り、また当社が保有するCellebrite社株数の時価総額は約1,588億円を示す中で、当社の時価総額評価は約816億円(いずれも2024年3月29日時点)と株価の割安感が一層顕著となったものと捉えています。

中期経営計画2025/3期ー2027/3期を策定

 原材料に関わる様々なコスト高騰や調達難を受け、中期経営計画の見直しを行いました。新中期経営計画(2025年3月期〜2027年3月期)では、①既存事業の稼ぐ力の改善、②新たな成長ドライバーの創出、③事業を支える経営基盤の構築という3つの戦略テーマの下、M&Aを含む成長投資に125億円かけながら、将来の成長基盤確立に向けた基盤構築に努めます。ポートフォリオの追加を含め、ビジョンに掲げた売上高500億円・営業利益率15%以上の実現への足がかりを確実に築き上げる3年間と位置付け、最終年の目標を売上高192億円(第53期100億円)、営業利益21億円(同3.1億円)と定めています。
 この推進にあたり、4月1日付でマトリックス経営を実現する組織体制への変更を実施しました。ここまで黒字化に向け、編成してきた兼任組織から、改めてそれぞれに機能を独立させ、責任を持って遂行する体制への移行です。新たに設置した事業推進本部は、取締役・事業部長クラスで組成し、新たな事業の創出・展開への判断のスピードアップを行う機能を果たします。
 また、事業のスピードアップに伴い、抜けによる品質に問題が発生する可能性も高くなることから、改めて教育にも力を入れていきます。やるべきことを具現化した本格的な教育体制が整いつつあり、これまでの属人的なフォローから規定化・組織化でしっかり抑える仕組みへの移行に大きな期待を寄せています。各事業セグメントにおける取り組みは以下の通りです。

グローバルデータインテリジェンス事業

 犯罪捜査のDX化が加速し、引き続き市場が拡大する中、法的執行機関に対して、捜査リソースの生産性を向上させる最新鋭のデジタルインテリジェンスツールの提供に加え、専門的なトレーニングとサービスを強化しています。また、デジタル証拠量が爆発的に増加する中、年々巧妙化・組織化するサイバー犯罪に対し、インシデント*発生後に調査・解析するツールのみならず、インシデントを事前に予知・防止する脅威インテリジェンスやアクティブサイバーディフェンス関連商材、関連サービス・サポ―トとの相互関連性が高まっています。
 こうした動きを受け、サン電子の事業活動としては、当事業ビジョン「顧客のファーストコールカンパニーとして信頼されるワンストッププロバイダーを目指す」の実現に向け、デジタルフォレンジック商材に加え、Cellebrite社が新たにリリースした民間部門向けモバイルデバイス調査用のオールインワンアプリケーション「Inseyets」、また、ダークウェブ等、通常、目の届かない情報を検索できるイスラエル製の「Cybersixgill」等、新たな取扱商品の提供を開始しました。いずれも一般の大企業や監査法人、金融機関等にとって不可欠なソフトウェアであり、取引層を広げながら、拡販を狙っていきます。
 今後も新たな技術を備えた商材、これまでに培ってきたイスラエルをはじめとするネットワークを活かした高付加価値製品の探索を通じて、商品ラインアップの充実を図り、国内のフォレンジック製品・デジタルインテリジェンス市場を牽引し続けるのみならず、アジア太平洋地域の営業強化も進めていきます。

*インシデント:情報や制御システムの運用におけるセキュリティ上の問題として捉えられる事象

エンターテインメント関連事業

 パチンコ・パチスロ市場は、2022年11月から導入され始めたスマート遊技機に稼働が好調なタイトルが登場し、スマートパチスロを中心に新台需要が高まりを見せています。
 当社は引き続き、顧客との強力な信頼関係の構築と特定分野における表現力・技術力の蓄積からの高い商品力を有するコンテンツの開発により競争優位性を高めていきます。
 ゲームコンテンツ市場は、コロナ禍明けから先進諸国ではやや縮小傾向、リリースされるゲームの数は拡大傾向という状況下で競争が激化しています。そうした環境下でも当社は、知名度の高い「上海」ブランドを用いたコンシューマー機向けゲーム・モバイルゲームの開発から運営を社内で完結し、コスト効率のよい収益を長期にわたり維持することができています。
 また欧米市場を中心に、「レトロゲーム」ジャンルの人気が再来しており、当社が数多く保有するIP*の有効活用から収益拡大が見込める状況にあります。オンラインゲーム「いっき団結」は発売当時プラットフォームのランキング上位に入ったほか、サンソフトの90年代を代表するレトロタイトルの32年ぶりの続編「へべれけ2」が好評を得るなど、手応えの感じられる1年となりました。第54期もIP*を有効活用した新タイトルをさらにリリースする計画としています。

*IP(Intellectual Property):知的財産。ゲーム業界におけるアニメーション・漫画の版権(著作権)

新規IT関連事業

 IoT市場では、人手不足解消や生産性向上として、遠隔地からアクセスし、監視・制御するシステムの需要が増加し、当社の産業用ネットワーク機器「Rooster」の導入が広がりを見せています。異なる通信キャリア回線の冗長化を可能としたデュアルSIM対応の「Rooster」は、通信キャリア網の障害発生時に自動で検知・切換を行い、遠隔監視・制御・データ収集を止めることなく運用できるルータです。長時間安定稼働の信頼性に高い支持を集めており、特に飲料自販機向け戦略製品「A330」「A900」は、既に50万台以上の導入実績があります。
 2026年3月までに各通信キャリアが3G回線を停波することを受け、長年培ってきた技術をベースに、3GからLTE(4G)回線へのマイグレーションに関連した特許を取得し、導入対応を進めています。第54期は、過日の半導体不足の影響がお客様の計画に及び、先送りとなっていた需要が確実に反映されることから大幅増収になると見込んでいます。
 2023年6月には、無人環境での安定通信と可用性を備えたIoT環境に適したコンパクトな低価格ルータ「SE220」を、9月にはAI画像解析搭載可能なエッジコンピュータである高機能ルータ「LBX8110」をリリースしました。「SE220」は好調なスタートを切っており、「LBX8110」は他デバイスとの連携ソリューション展開を通じて今後の事業拡大に貢献する製品であると期待しています。今後も各通信キャリア・SIerなどパートナーと強力な信頼関係を構築しながら、国内トップシェアの技術優位性に基づく信頼を高めつつ、IoTルータシェアのさらなる拡大を目指します。
 また、遠隔地に多数設置されたIoTデバイスの運用管理の負荷軽減が課題となる中、遠隔での死活監視や一元管理を可能とするセキュアな運用管理ソリューション「SunDMS」の提供に力を入れています。「おくだけセンサー」やPLC(Programmable Logic Controller)など、あらゆるデバイスやネットワークデータの収集・制御・可視化を可能とする「SunDMS-Insight」に加え、年内のPOC(実証実験)販売の開始を目標に、次なるソリューションソフトウェアの開発を複数進めています。将来には、BI・AIによる集計・分析・検知も加えたソリューションの提供を通じ、遠隔運用管理の効率性、セキュリティ向上に貢献しながら、ストックビジネスの拡大を目指します。
 2022年10月にマーケティング部と技術開発部を統合して発足した研究開発部門では、データビジネス推進の一環として、5GやエッジAIをキーワードに、人工知能(AI)・ヘルスケアの技術開発を進め、先端技術力で各事業部の成長を支える取り組みを強化しています。また、技術シーズを持つ大学や企業と要素技術かつ先端技術開発の共同研究を通じて、さらなる差別化製品の開発を通じた新たな領域への参入も視野に入れています。
 こうした取り組みを通じて、従来のハード売りの事業構造から、本格的ソリューション提供によるサブスクリプションモデルへの移行を図り、さらにセキュリティやAIを加えた総合的なソリューション展開による収益力向上を実現する新たなビジネスモデルの構築を急ぎます。
 前期、グループに加わった海外子会社のEKTech Holdings Sdn.Bhd.(マレーシア)は、引き続きATM通信の監視ほか、電磁ロックや監視カメラ、インターフォンの販売も順調に伸び、定期的な収入源となっています。1年かけてグループシナジーのあり方を検討し、M2M連携によるATM通信の監視セキュリティ強化などが方向感の1つとして見えてきたことから、2025年早々には、具体的な商材の販売を開始できるよう開発を進めています。

株主の皆様へのメッセージ

代表取締役社長 内海 龍輔

 これからのサン電子の進むべき方向、あるべき姿を改めて明確に示すために、企業理念体系を刷新しました。「サン電子の技術で社会問題を解決する」をミッションに、経営理念に「チャレンジ企業であり続けること」を掲げ、その現実化の指針として、具現化(マテリアライズ)、挑戦(チャレンジ)、完遂(アコンプリッシュ)を企業スローガンと定めました。これは、描いた夢を具体化することで見えてくる、現実化に向けた障害・リスク・不安と対峙した上で、行動に移し、遣り放しにすることなく確実に成し遂げる、そうした精神を貫く姿勢を将来にわたり、サン電子らしさとして創造し続けていこうという想いを形にしたものです。
 創業から54年、今後も変わらず、新しい技術の開発・活用をもって世の中に貢献していきますので、株主の皆様におかれましては、引き続きご支援賜りますようお願い申し上げます。