第52期 株主通信サン電子株式会社

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CEOメッセージ MESSAGE
CHIEF EXECUTIVE
OFFICER

第52期は厳しい状況下、
新中期経営計画2022-2024
初年度の売上目標を概ね達成、
黒字継続でV字回復を確たる道筋に乗せた1年に

代表取締役社長内海 龍輔

 第52期は、円安と半導体不足、インフレの影響を大きく受ける中、サン電子単体を確実に利益創出できる企業体質へと改革を進めたことで耐え抜けた部分はあったものの、利益面では非常に厳しい1年となりました。そうした状況下でも、次なる展開へ向けた商品群の高機能化・差別化のためのM&Aや商品開発、新商材の研究開発への投資を進められたことは、依然、道半ばではあるものの、守りの経営ではなく、企業価値向上へ攻めの事業活動を推進することはできたと認識しています。
 事業構成比は、Cellebrite社を主軸としたモバイルデータソリューション事業、遊技機及びゲームコンテンツを手掛けるエンターテインメント関連事業、M2MやIoTの領域で独自の製品開発を進めている新規IT関連事業の順に変わりはありませんでしたが、引き続きすべての事業の需要は堅調でした。

グローバルデータインテリジェンス事業(旧モバイルデータソリューション事業)

 法執行機関の業務におけるデジタル化が世界的に進んでいることに加え、最大のデジタル・インテリジェンス市場である米国では、より効果的な犯罪対策を築くための予算が増加していることなどを受け、Cellebrite社を中心にデータ分析分野を中心に事業成長しております。売上は好調に推移しましたが、同社の人件費、研究開発費の大幅増により、利益を圧迫する厳しい状況となりました。投資用途の整理、集中と選択のスピードアップを進めており、新しい期の利益率は改善してくる見込みです。
 サン電子としての事業活動については、売上はほぼ横ばいで推移しましたが、円安及びインフレの影響を受け、営業利益が減少する結果となりました。
 また、当第4四半期より、Cellebrite社が連結子会社から持分法適用会社となりました。同事業における関係性は継続していくものの、今後、当社の連結業績に与える影響は大幅に縮小することとなります。
 これを契機として、同事業の新たなグローバル展開を指向し、この4月より、事業部名をモバイルデータソリューション事業からグローバルDI(データインテリジェンス)事業に変更し、新商材の開拓・増大に注力した動きをさらに活発化させております。現時点で開示できる商材はありませんが、継続的に情報セキュリティ関連の有用な各種商材をはじめ、社会の安定・安全に貢献できるような製品の拡充に取り組みながら、新たな事業の形を構築してまいります。

エンターテインメント関連事業

 パチンコ市場については、パチンコホールの減少など、大きな動向変化の渦中にあるものの、2022年11月より導入され始めたスマート遊技機の稼働が好調なことを受け、新台需要も高まりつつあります。当社は、お客様との強力な信頼関係のもと、新たな挑戦に積極的に関わることで業績の向上を目指しており、第52期もお客様の事業戦略にしっかり追随し、増収を果たしました。利益面については、コロナ禍や継続する世界的な半導体不足等による供給難に加え、円安が進んだことや、部品の仕入れ価格が高騰した影響を受けた結果、増収減益となりました。
 ゲームコンテンツ事業は、既存のモバイルタイトル、ライセンス事業を収益基盤としたパブリッシャーとしての動きに加え、新たな収益の柱として当社レトロゲームIPを活用した新規タイトルの開発が進んでおります。2月にSteamでリリースした最大16人のマルチプレイに対応したPCオンライン協力プレイゲーム「いっき団結」は、発売初日に日本の売上ランキングでトップ10に入り、レトロIPが市場で通用した好例となりました。新たなゲームの方向性をある程度、見出せたとの感触を得ており、第53期中に数タイトルをリリースし、新たな成長への足がかりとしたいと考えております。

新規IT関連事業(IoT、その他)

 各通信キャリアが2026年3月までに3G回線を順次停波することを受け、3GからLTE(4G)へのマイグレーションが本格化する中、大手通信キャリア、パートナーと連携しながら、飲料自販機検量サービス向け戦略製品「A330」「A900」が複数の大手飲料オペレータへの導入を開始しております。しかしながら、部品の入手が困難な状況が続き、出荷見合わせの判断を取らざるを得ないケースもあり、前期より販売台数を落としたことで減収減益となりました。引き続き堅調に推移すると見込まれる需要を確実なものにできるよう、調達ルート確保に一層注力してまいります。
 また、通信キャリアの通信障害が発生しても安定運用を実現する回線冗長化やデバイスマネジメントサービス「SunDMS」との連携で差別化を打ち出しているRooster等のルータ・ゲートウェイ製品の売上高も堅調に推移しております。
 IoT分野において導入が始まると、遠隔地で無人環境の多拠点で運用を行うためルータ・ゲートウェイのみならず、顧客、パートナーの本番環境運用を支援するデバイスマネジメントサービス「SunDMS」が不可欠です。当社は従来より「SunDMS」を提供し、すでに6 万アカウント以上が運用に使われておりRooster シリーズと同時に顧客ニーズに応えるため、運用に必要な継続的なサービスを強化すべく、営業及び開発を行ってまいります。
 また更なる事業拡大に向けAI 画像解析搭載可能なエッジゲートウェイリリースに向け開発を進め、またSEの新規リリースに向けて取り組むと同時に戦略的パートナーに対しても営業活動も開始し、第53 期からの業績への貢献に期待しております。
 2023年2月には、IoT事業とのシナジーを狙い、EKTech Holdings Sdn.Bhd.(マレーシア)を完全子会社化しました。日本に対して良い印象を持つASEAN地域内、特に工場が数多く立地するマレーシアにおいて、部品不足対策となるEMS受託先の検討を進める中で、日本のIoTを事業に取り込みたいとの想いを持つ同社との出会いがあり、今回のM&Aに至っております。まずは両社の融合を進め、統合効果を発現させることを第一に、いずれは新たなIoT関連製品をASEAN各国へ展開するための拠点を増やしていきたいと考えています。

新分野に挑戦するマインドを活性化させ
更なる付加価値の創出を意図する中期経営計画
サン電子単体で売上高200億円を目指す

 モバイルデータソリューション事業をグローバルDI事業に名称を変更し、新たな商材創出の動きを加速させているほか、収益向上を意図し、2022年10月にマーケティング部と技術開発部を統合した研究開発部門も設立しました。先行的にテーマを選定し、市場のニーズとタイミングを見て、実際の製品化をスピーディに行える体制としていきたい考えです。足下では、データビジネスの推進をテーマとして、人工知能(AI)、情報セキュリティ、ヘルスケア領域において、新たな価値提供に向け、技術開発を始めております。また、研究開発については、差別化した製品開発を目指し、技術シーズを持つ大学との共同研究を実施してまいります。
 こうして事業体制を少しずつ変化させながら、人的資本への投資として、改めて教育体制をさらに整え、深く実行していける体制としてまいります。技術的な教育投資はもちろん、部門の垣根を越えて皆で自由闊達に意見を出し合う中で、良い製品・ソリューションを世に送り出していくベンチャースピリットこそサン電子がこれからも大切にし続けていく企業カルチャーであり、今一度そういった社内風土づくりを進めてまいります。アクセスのしやすいオフィスへの移転もその一環でありますが、コミュニケーションの活性化や社員の働きやすさへの配慮など新たなアイデアの創出を促せる環境整備に注力してまいります。
 事業の広がりとしては、各論にこだわり、確実に仕上げていくよりは、より多くのことに少しずつ手をかけ、芽が出始めたものによりスピード感を持って注力する方向に進む時期にあると捉えており、そのためのアイデア出しをしやすい環境を整えることが重要であると考えております。流れを先読みし、より多くの事業の芽を育てることでリスクを分散しながら、新商品を創造し、顧客や社会に新たな価値提供の機会を伺っていく、そうした姿勢で臨んでまいります。

株主の皆様へのメッセージ

代表取締役社長 内海 龍輔

 サン電子はグローバル展開を目指す企業として、これまでも様々なチャレンジをしてまいりました。Cellebrite社を買収し、事業拡大をしてきましたが、Cellebrite社は米国NASDAQ市場に上場し、連結子会社から持分法適用会社となりました。これにより、連結業績の見え方は大きく変わりますが、この状況変化を機に、新しいグローバル展開を目指すサン電子に変化してまいります。その道筋を描く第一弾として、マレーシアのEKTech社の100%買収を実行しております。
 引き続き、情報通信とデジタル技術の向上により、社会の安定・安心・安全を提供するグローバルDI事業と、人に楽しみ、豊かさをもたらすエンターテインメント関連事業、BtoBの生産性や付加価値創造に直結する新規IT関連事業のすべてにおいて、新たな商材・事業を創出しながら、社会価値創造を提供する会社であり続けたいと考えております。
 新しいスタートを切ったサン電子にご期待をお寄せいただきますとともに、引き続きご支援のほどお願い申し上げます。