第51期 株主通信サン電子株式会社

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特集
事業クローズアップ

-モノの提供からソリューションの提供へ-
M2M事業
(新規IT関連セグメント)
の展望

M2M事業部 営業部 営業課課長田中 伸宜

 当事業の看板商品である、モバイルルーター「Rooster」シリーズは、厳しい使用環境下においても安定稼働を可能にし、既に幅広いお客様からの信頼を獲得しています。
 市場からの信頼も厚い、ルーター単体の提供だけでなく、社会課題解決に向けたソリューション提供といった次なる展望について、M2M事業部 営業部 営業課課長としてセールスを最前線で牽引する、田中伸宜が語ります。

安心安定を追求し続けてきたサン電子らしさで
広範囲な課題解決に寄与するソリューションの提供

 1985年にアナログモデムの販売からスタートしたM2M事業は、インターネット黎明期から安定した通信を追求し続けてきました。
 現在は、モバイルルーター「Rooster」、現場に設置した「Rooster」を遠隔監視・制御するデバイスマネジメントサービス「SunDMS」、これらを有効活用するセンサーデバイス「おくだけセンサー」などのM2M/IoT領域の周辺プロダクトを中心に、今期からはスマートグラスによる遠隔支援を可能とする「Assist」が加わり、M2M事業を形成しています。安価な海外製品が数多くあるなかで、「サン電子の商品は検討性に優れている」と、価格以上の安心安定といった付加価値から、当社製品を継続的に採用いただいているお客様も非常に多くいらっしゃいます。長年にわたる信頼の実績がM2M事業最大の強みです。

社会的ニーズの変化と今後のビジネスの展望

 2026年3月までに各通信キャリアの3G回線が順次停波(マイグレーション)される過程で、4G対応通信機器の入れ替え需要は続きますが、その後はより速いデータ通信の5Gという、高速ネットワーク上での運用に伴う新しい課題が生まれてくることは必須です。そうした長期的な視点から先々の課題を見据えた上で、より幅広いお客様にご活用いただける新たなソリューションを探り、市場投入することで、競争優位性を維持していきたいと考えています。
 コロナ禍の行動制限等により、働き方に変化が見られたことで、これまで慎重だったクラウドサービスの利用に現場監視の解決策の一つとして期待が寄せられ、実際に採用いただく流れがでてきています。「Assist」も具体的な課題に対する解決策をご提案させていただくことが増えており、3年前に展示会に出展した時と比べると、導入に向けてのハードルが随分下がってきた印象があります。作業員がスマートグラスを装着して映した現場の映像を、PCやタブレットで共有し遠隔支援するお客様事例などがありつつ、ベテランから若手への技術継承という課題解決の手段として、スマートグラスを探しているというニーズも多く耳にします。人手不足を解消する省人化対応を含め、社会課題の解決という観点からも、通信を用いた遠隔管理やリモート操作などで貢献できることは多いと実感しています。

モノの提供からソリューションの提供へ

M2M事業部 営業部 営業課課長 田中 伸宜

 これまでは「安定通信」を実現する装置(ハード)のモノづくりを軸に、それぞれのプロダクト単独で解決できる課題に対応するビジネスを展開してきました。昨今、お客様の事業を取り巻く環境も大きく変わり、単なる通信機能だけでなく、さまざまな課題解決を実現する製品・サービスが求められるようになっていくなかで、各プロダクトを組み合わせ、シナジーを発揮し、より広範囲な課題解決に寄与するソリューション提供へと転換していく時期を迎えていると認識しています。
 例えば、工場の機械等をデバイスで常時遠隔監視・制御し、問題が発生した場合には「Assist」で遠隔支援する、という一連のプロセスを構築した上で、そのサポート対応も含めた現場コミュニケーションの活性化提案を行うことができます。さらに「SunDMS」で遠隔監視・制御するセンサーなどのデバイスから、現場の情報を収集・管理する機能を追加するなど、サービスの拡充を進めており、今後は「データを収集分析して、現実世界にフィードバックしていくサービス」を提供していきたいと考えています。

Sun DMS

複数拠点に設置された「Rooster」の死活監視、ステータス情報(電波強度/品質・温度・電圧)の取得、ファームウェアの更新、設定情報の変更など「無償」で遠隔集中管理を可能にするデバイスマネジメントサービス

中期経営計画では売上高30億円〜50億円を目標に

 この春からスタートした新中期経営計画では、市場自体が成長期にあることから、事業規模を現状の売上高10億円〜20億円レベルから30億円〜50億円にまで引き上げるという高い目標を設定しています。
 「モノの提供からソリューションの提供へ」の転換を指向するなかで、事業部内では、アイデアソン、ハッカソンをはじめとする仕組みづくりを進めつつ、会社全体としては新設されたマーケティング部や技術開発部などと連携しながら協業していく動きを強めています。
 お客様は「Rooster」や「おくだけセンサー」といったハードではなく、それらを使った「リモートメンテナンスをしたい」「遠隔監視をしたい」といった課題解決策を求めています。従来、私たちはものづくりの立場から、性能や組み込み部品などスペック中心の提案になりやすいところがありました。ですがこれからは、お客様は何を求めていて何を解決したいのか、そしてそのための道具として何が提供できるのか、お客様視点の問題解決型の提案に変えていかなければなりません。
 そのためにもサン電子単独でできることは限られていることから、トータルソリューションの提供に必要とされる新しい技術を身につけ、それぞれの業界の業務知識に長けたパートナーと信頼関係を築き、アライアンスも視野に入れながら、お客様が抱える本質的な課題を解決するためのソリューションを数多く提供していくという姿勢で臨んでいきます。
 また、以前は情報通信やネットワークの知見をお持ちのお客様に対し、当社の機器を組み込むことで、こんなことが実現できますよ、といったイメージを共有しながら、お打ち合わせするケースが多くありましたが、最近はこれまでとは異なる業界・領域の方からお問い合わせをいただくことが増えています。
 私たちの活躍の場が広がっていることを実感する一方、いかにわかりやすくお伝えし、理解いただき、導入していただけるようにするか、アプローチや視点についても工夫を重ね、お客様に寄り添っていく姿勢が求められると感じています。
 IoTが拡大するなかで、高機能・高性能・高品質かつ国産の安心感という長年培った強みにAIなどの新たな技術を加えたトータルソリューションに磨きをかけ関係者一丸となって更なる成長を目指していきます。