第49期 株主通信サン電子株式会社

JASDAQ 証券コード:6736

CEOメッセージ MESSAGE
CHIEF EXECUTIVE
OFFICER

サン電子は新体制のもとよりよい社会の実現に向け
これからも挑戦し続けていきます

代表取締役社長木村 好己

新型コロナウイルス共生の時代に高まるリモート需要を成長の機会に主力事業を3本柱にすることで安定した経営基盤の構築を目指します

「夢・挑戦・創造」をスローガンに、新たな事業への挑戦を続ける中で、現状はポートフォリオが拡大し、多岐にわたった状況に至っておりますが、こうした企業文化が、主力事業に成長したモバイルデータソリューションのように、広くグローバルに活用されるビジネスを生み出すバックグラウンドとなっていると認識しています。
また、研究開発活動を重視した様々なチャレンジを通じて獲得してきた、ハードウェアとソフトウェア両方のノウハウを活用して、トータルな視点でのソリューション型ビジネスの構築が今後の当社の差別化の源泉となることと確信しております。

実質営業利益は損益分岐点の水準まで改善し全体としての経営効率性は向上

 第49期(2020年3月期)は4期連続の赤字着地となりましたこと、株主の皆様に心よりお詫び申し上げます。
 売上構成比の約7割を占めるモバイルデータソリューション事業は、ヨーロッパやその他アジアオセアニア地区においてデジタル・インテリジェンス事業が好調に推移し、前期に売却したモバイルライフサイクル事業の売上高約16億円の減収を補っての増収となりました。
 一方、事業規模拡大による固定費の増加に加え、連結子会社Cellebrite社(イスラエル)の成長を目的としたM&Aのための資金調達として実施した、優先株式の第三者割当増資に伴う費用約22億円の発生により10億58百万円の損失となりました。ただし、この一過性費用の影響を除いた事業利益は約11億50百万円と、約6%の利益率を維持しております。
 エンターテインメント関連事業は増収増益、売上は微増でしたが、継続的に取り組んできた費用効率化に向け たプロジェクトの進展、開発受託案件の増加もあり、事業利益率は4.7%と4.4ポイント改善しております。
 新規IT関連事業は増収、その他セグメントは減収となりましたが、ともに2019年3月期にリリースした新製品の開発費減少等により、損失幅が縮小となりました。
 これらの結果、連結売上高は262億20百万円と増収、営業損益は22億52百万円の損失となりました。前期は2億円の営業損失であり、Cellebrite社の資金調達に関連する一過性の費用約22億円の影響を除くと、営業損益はほぼ損益分岐点の水準まで改善してきたことになります。
 また、事業ポートフォリオの再構築を目指す中で、事業構造の見直しにより、構造改革費用としてAceReal、ホールシステムにおける棚卸資産を中心に事業整理損失(計約11億円)を計上したことで、親会社株主に帰属する当期純損益は34億40百万円の損失となりました。
 単年業績としては非常に厳しい結果となりましたが、モバイルデータソリューション事業をより成長させるM&Aのための資金調達、拡大した事業ポートフォリオの最適化に向けた取り組みに起因したものであり、全体として経営の効率性は向上させることができたと考えております。

主力事業を3本柱へ
新たな経営体制で企業価値の回復・向上を図る

 臨時株主総会の結果を受け、代表取締役を務める私を除き、執行側の経営陣が交代となりましたが、すべきことは変わらないと考えております。まずは、しっかりと外部環境を認識し、優先順位をつけて経営資源を配分すること、そして従業員の方たちを大切にし、生き生きと働いてもらえるようリーダーシップをもって前進したいと考えています。
 株主の皆様からいただいたご指摘を真摯に受け止め、進めてきた戦略についてそのまま進めるべきこと、変えるべきことを整理しながら、企業価値の回復・向上に向けた経営を進めてまいります。
 今後の中長期的な成長戦略としては、まずは、モバイルデータソリューション事業を成長の柱として位置づけ、グループの経営資源を重点的に投下してまいります。
 また、モバイルデータソリューション事業とエンターテインメント関連事業に加え、当社が蓄積してきたM2MやARなどの遠隔支援・監視・制御などのノウハウを新型コロナウイルス感染拡大により、さらなるニーズの高まりを見せるリモートワークへと活用・拡大することで、新規IT関連事業をもう1本の柱へと成長させ、主力事業を3本柱とする安定した経営基盤の構築を目指します。

モバイルデータソリューション事業

 Cellebrite社製品を中心に、モバイル端末内部に蓄積されたデータを抽出・復元し、抽出したデータの高度な検索・分析・レポート作成までを可能とする、いわゆるデジタルフォレンジックソリューションを犯罪捜査機関・司法機関等向けに提供するデジタル・インテリジェンス事業を世界150か国以上に向け、展開しています。
 引き続き、モバイル端末から得られる情報は、犯罪捜査や裁判時において重要な証拠となる傾向に変わりはなく、多くの市場調査資料によれば、モバイルフォレンジック市場は年率10~15%程度の成長を見せており、また、当社事業も過去数年にわたり、受注ベースで平均28%の成長を実現しております。これは積極的に新たなサービスや製品を開発し、事業規模拡大に向け、着実に裾野を広げてきた結果だと捉えています。他社にはできないデータ抽出、業界で最多となる端末・アプリ対応数をコア・コンピタンスとして、さらなるシェア拡大を目指します。
 また、犯罪捜査では、データの抽出からデータの分析へと、活動の中心がシフトしていくと見込まれ、現在はデータ抽出に特化しておりますが、今後はデータの増大化・複雑化を念頭におき、近年、研究開発を進めてきた分析・解析システムの機能向上・拡販にも取り組んでまいります。
 2020年1月には、MacOSに強みを持つコンピュータフォレンジック会社BlackBag社を第三者割当増資により得た資金で買収しました。このM&Aの実施の成否に対する株主の皆様からのご意見は重要と捉えておりますが、iOSのモバイルフォレンジックに強みを持つCellebrite社とBlackBag社の事業統合を進めることは、データ抽出の難易度が最も高いとされるアップル社のフォレンジック対応強化をさらに高め、デジタル・インテリジェンス業界No.1の実現に大きく近づくことになると考えております。
 2021年3月期は、まずは新型コロナウイルスの対応を最優先課題とし、リモート作業に対応する機能充実やテクニカルサービスの強化、対応力の向上に努めるほか、引き続き業界最大規模の維持を目指した研究開発も進めます。一方で、粗利率が80%もあり、1億円の減収が8千万円の減益になる事業であることから、業績の見通しが難しい状態下にあって、まずは事業の安定を図るため減収に耐えられる事業体制の確立を優先し、事業拡大については一旦押さえつつ、将来的な実施を視野に入れながら、隣接分野のコアプレイヤーのM&A検討を進めてまいります。

エンターテインメント関連事業(遊技機メーカー向け、パチンコホール向け)

 厳しい事業環境下にあるパチンコ業界は、緊急事態宣言によるパチンコホールの営業自粛の影響でその厳しさを増していますが、規則改正などにより、パチンコ業界は大きな変革期を迎えており、その変化に対応した遊技機を一早く開発し、遊技機メーカー様とともに市場をリードできように進めてまいります。
 2020年3月期は、パチンコホール向け経営管理コンピュータ等の設備を取り扱う事業の事業環境に適した体制構築に向け、棚卸資産などの資産価値を圧縮し、資産効率を向上させた上で、現場に近いところで柔軟な経営判断ができるよう、2020年5月に株式会社SUNTACとして子会社分割を実施しました。厳しさが増す環境下において事業構造の最適化を進め、機動的に対応できる体制を整備していきます。
 2021年3月期は、原価低減などの生産性の向上に注力するとともに、市場の変化にマッチした新たな楽しみを提供できるよう、VR、ゲームコンテンツ事業とのシナジー効果を活かして、ヒット機種の創出を目指します。

新規IT関連事業(M2M事業、AceReal事業ほか)

 新たな事業の柱の構築に向け、取り組んでいる新規IT関連事業のうち、M2M(機器間通信)事業は、従来のルータ(通信機器)を中心とした販売モデルから、IoTのソリューションビジネスモデルへの進化を目指した取り組みを進めております。2020年3月期は、自動販売機向け通信機器のほか、その他案件の獲得も順調に推移し増収、費用の効率化も進展し、損失も縮小しました。引き続き、ルーター「Rooster」の拡販や5Gなども含めた通信関係の需要の掘り起こしを進めると同時に、「おくだけセンサー」のHACCPなどのマーケティングを強化しながら、パートナーや厨房機器メーカーと連携した食品工場、店舗向け販促にも努めてまいります。
 AR(拡張現実)技術を活かした産業用向け業務支援ソリューションの提供を目指すAceReal事業は、2020年3月期は、販売は実証実験フェーズの採用にとどまったものの、開発費用は減少し、損失は縮小しました。販売状況やマーケティング結果を通じて、遠隔支援中心のソリューション型のビジネスへの移行が重要だとの結論に至り、事業転換を進めております。
 遠隔支援は、以前より強い需要がありましたが、新型コロナウイルスとの共生が模索される中、一つの有力な手段としてより喫緊の課題になったとの認識です。当社は、早くから製造業を中心として様々なお客様とB2B向けARスマートグラスの実証実験や商談を重ねる中で、遠隔支援のニーズも多く把握してきており、新たな活用の場面にも要望に即応するソリューションをいち早く提案できるものと考えており、リモート作業に対応するためのさらなる機能拡充を図るとともに、各企業の需要に応じた開発活動に注力してまいります。

その他事業(スマートフォン向け・VR向けゲームコンテンツ)

 ゲームコンテンツ事業は、目下、損益のバランスをとることを優先し、安定的に収益が獲得できる運営体制とすべく、タイトルの見直しを進めております。損益のバランスが取れた段階で、サンソフトという長く人気を保ってきたブランドを活かした事業展開の検討も進めていきます。

2021年3月期は中長期的な成長の実現に向けグループとしての実力を蓄積する一年に

代表取締役社長 木村 好己

 まず株主還元につきまして、計画から変更し、無配とさせていただきましたことお詫び申し上げます。新型コロナウイルス感染拡大などにより、経営環境がより一層厳しさを増す中で、財務基盤の安定性を重視したこと、また、モバイルデータソリューション事業においてさらなるM&Aを検討している中で、将来における投資余力の確保を意図したこと、そして、サン電子の事業損益のバランスをとるための資金的な余裕を確保したかったことに起因します。
 またグループの主力事業が、エンターテインメント関連事業から成長期にあるモバイルデータソリューション事業へと移行している中で、中長期的な企業価値の向上に向け、積極投資を視野に入れながら、事業損益、将来のフリーキャッシュフローの状況などを鑑みて、配当を弾力的に決めていく方針が良いとの結論に至っております。
 第49期(2020年3月期)は、一過性の費用の影響を除けば、グループ全体で損益分岐点付近まで損益は改善してきました。しかしながら、企業価値の向上のためには、各事業のさらなる損益改善が急務です。第50期(2021年3月期)は、新型コロナウイルスの影響等により、非常に厳しい経営環境でのスタートとなっていますが、いち早く黒字化を達成することにまずは注力してまいります。
 また中長期的な成長の実現に向け、グループとしての実力を蓄積する一年として、新型コロナウイルスへの対応、事業ポートフォリオの再構築、モバイルデータソリューション事業の成長性の維持など、想定外の事象が起こる中でも継続性が損なわれないよう守りに重点を置いた経営を進めてまいります。その上で、モバイルデータソリューション事業におけるBlackBag社との事業統合、エンターテインメント関連事業の市場変化に応じた製品の開発、新規IT関連事業におけるリモートという新しいスタイルに対応する製品・サービスの提供に向けて取り組みを強化してまいります。
 株主の皆様におかれましては、引き続きご支援・ご鞭撻を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。