第48期 株主通信サン電子株式会社

JASDAQ 証券コード:6736

CEOメッセージ MESSAGE
CHIEF EXECUTIVE
OFFICER

情報通信&エンターテインメントの両軸で
社会に新たな価値を創造し続ける

代表取締役社長木村 好己

木村 好己 プロフィール

市場の変化をチャンスと捉え、積極化してきた先行投資も一段落。
将来の大きな飛躍に向け、手応えある第一歩を踏み出した1年に。

さまざまな産業において大きな変動・変革が生じている今こそ、大きなビジネスチャンスが生まれる時にあると考えます。当社グループでは、これまで新たなビジネスチャンスの獲得に向け、新たな製品・サービスの創造を目的に先行投資を積極的に行い、将来に大きく飛躍するための準備を進めてきました。第48期は、想定した新規IT事業の本格的な立ち上がりには一歩及びませんでしたが、新たな成長に向けての手応えを得られた1年になったと認識しています。第49期は、芽吹き始めた取り組みを確実に花を咲かせ、2020年以降の成長の方向性を確実に示す1年にしてまいります。

モバイルデータソリューション事業を牽引役にグループ全体としての黒字化を射程圏に捉えるも一歩届かず

 第48期(2019年3月期)は、複数の新規IT事業立ち上げの時期にあったことから、連結業績における経営目標に幅を持たせて発表していましたが、売上高は計画値245億円から255億円に対して252億43百万円(前期比4.0%減)と目標の上限に近い数値まで伸ばすことができました。
 利益面は厳しい状況を覚悟してのスタートとなりましたが、モバイルデータソリューション事業が想定以上の伸びを示し、営業損失は2億円から11億円の計画に対して2億円(前期10億74百万円の損失)、経常損失は4億円から13億円の計画に対して3億52百万円(前期11億2百万円の経常損失)といずれもマイナスが最小値に近い数値での着地となりました。特別利益としてモバイルデータソリューション事業におけるモバイルライフサイクル事業売却による売却益を、特別損失として出資していたInfinity AR社(イスラエル)の株式譲渡に伴う減損損失等を計上し、税金等調整前当期純利益は4億53百万円となりましたが、親会社株主に帰属する当期純損失は9億85百万円という結果となりました。最後の最後まで、グループ全体としての黒字化を目指して粘りましたが、最終的には新規IT事業があと一歩、本格的な立ち上がりにまでは至らず、当初計画の範囲内ではありますが、赤字継続という結果となりました。

成長戦略に則り最新技術を活用した新たな事業創造にチャレンジ

 当社グループは、将来性、成長性にご期待いただける企業であり続けるため、最新技術を活用しながら、市場の変化に対応し、性能・品質に優れた信頼される高付加価値な製品と魅力あるサービスの開発を追求しながら、新たなビジネスチャンスを作り出すことを成長戦略とし、現在大きく6つの領域で事業展開を広げています。

モバイルデータソリューション事業

 連結子会社Cellebrite社(イスラエル)製品を中心に、犯罪捜査機関等向けデジタル・インテリジェンス事業を展開する当事業は非常に順調に成長しています。
 第48期は、売上高は184億2百万円と計画値に対して24億円増、営業利益は17億94百万円と計画値に対して12億円以上と当初計画より大幅増での着地となりました。
 主力製品である携帯端末内部に蓄積されたデータを抽出・復元し、抽出したデータの高度な検索・分析・レポート作成までを可能にする、いわゆるデジタルフォレンジックソリューションが、世界各国の警察、軍、法執行機関等で使用されるスタンダード製品になりつつあり、米国のみならず、欧州・アジアパシフィックにおいても高い伸長率を示しています。
 当事業は、導入後は毎年ソフトウェア使用料等のストック収入が発生するビジネスモデルとなっており、導入数が増えるほど売上が積み増していくイメージで、世界的に投資拡大基調が続くなか、当事業の業績も引き続き年率15%程度の成長が続くと見込んでいます。第48期は、新たにインドでの展開をスタートしました。
 今後はモバイルのデータ解析・分析を含め、新たな製品・サービスの開発を継続しながら、さらにプロダクトミックスを拡充し、全社業績の売上・利益を牽引する高成長事業として事業規模の拡大を目指していきます。
 なお、携帯端末販売店向けモバイルライフサイクル事業は、技術的差別化による利益創出がしづらい環境となってきたため、成長著しいデジタル・インテリジェンス事業に経営資源を集中させるため、2019年3月期第1四半期末に当事業を売却しています。
 また、情報セキュリティ分野への注力として、サイバーセキュリティ製品を手がけるSasa Software社(イスラエル)と販売契約を結び、取り扱いを開始しました。

エンターテインメント関連事業

 当社の安定基盤と位置付けるエンターテインメント関連事業は、ほぼ計画通りではありますが、前年と比べると売上高は半減、利益は1/3以下にまで落ち込む結果となりました。大きくは市場の低迷に起因する一方で、法律改正・規則改正への対応等の影響から、パチンコホールの遊技機の入替減少、新規出店や店舗改装等の設備投資を先送りする傾向等が強まるなかで、制御基板等をOEM供給している遊技機メーカー様が大型タイトルを発表しない年にあったことも直接的な要因となりました。
 第49期も厳しい状況は続くと思われますが、いよいよ2019年の年末あたりから、次世代遊技機と呼ばれる管理遊技機(パチンコ)やメダルレス遊技機(パチスロ)が市場に出てくると言われており、これを機に低迷の時期が続いていた市場の流れも少し明るい方向に変わってくるのではないかと見ています。
 次世代遊技機の登場により、これまで私たちが提供してきた商品が改めて再評価されるタイミングが訪れることになると捉えているほか、パチンコ玉やメダルそのものの管理方法が変わり、持ち運ぶ手間が省け、騒音が少なくなるなど、ホール経営にかかる設備投資や運営コストの低減が見込まれることから、効率的なパチンコホール経営を支援するホールコンピュータシステムへの投資が拡大する可能性もあると見ています。
 当事業につきましては、長年にわたり培ってきた競争力を活かしながら、今後も引き続き安定的な成長を目指してまいります。

新規IT関連 [IoT/M2M分野]

 M2M(機器間通信)分野は、従来のルータ(通信機器)販売を中心としたビジネスモデルから、IoTプラットフォームのソリューションビジネスモデルへの進化を目指し、業容の拡大に取り組んでいます。
 第48期は、自動販売機に搭載されているルータ製品の対応仕様の変更要求に対し、導入時期に遅れが生じたことで売上高を大きく減らすこととなりました。第49期はこれを取り戻し、対応製品を導入していただける流れを拡大していきます。加えて、当社の特徴を活かした商品づくりのひとつとして、企業のIoT化をトータルに支援できるように開発したデータ化のキーになるセンサーデバイス「おくだけセンサー」の実証実験を受注につなげ、第48期をボトムとして、確実な巻き返しを図っていきたいと考えています。

新規IT関連 [AR(拡張現実)分野](AceReal One)

 AR技術を活かした新事業、産業用向け業務支援ソリューション「AceReal One」を2018年9月より開発者向け限定モデルとしてリリースし、翌2019年2月から正式販売を開始しました。計画では、第48期中の立ち上がりを期待していましたが、数社との実証実験を通じて機能改善に取り組むなかで、より使いやすさを追求し、最終仕様において一部デザインや色等設計変更を加え、計画より半年ほど販売時期を遅らせたため、期中には、本格的な立ち上がりまでには至りませんでした。
 現在は、販売パートナー5社とともに、フィールド作業を必要とする企業を中心に提案活動をスタートさせ、すでに幅広い業界で評価をいただくなど、手応えを掴んでいます。今後、5Gという社会インフラの整備が進むなかでさらに多様な市場展開へのチャンスが広がってくると見ており、将来に向け、非常に期待できる状況にあると捉えています。
 また、M2M、AR両事業ともに、従来型の物販スタイルではなく、システム構築を含めてサポートするソリューション提案スタイルでの拡販を指向しており、市場展開に向けて互いに協力し合いながら、大きな収益の柱へと育てていきたいと考えています。

新規IT関連 [O2O分野]

 外食企業向けに、単なる販促だけでなく、テイクアウトの予約注文までを行えるアプリを展開している飲食店向けクラウドサービスは、現在、約300店舗で利用されています。本格的な立ち上がりに若干時間は要しているものの、大手飲食チェーン店からの引き合いも増えるなど、徐々に知名度が高まってきています。
 アプリによる予約注文は、店頭購入に比べ、検討に要する時間に余裕があることから、導入店では購入アイテム数が増え、客単価が上昇するという効果が実績として出はじめています。今後はこうしたメリットを訴求しながら、事業を大きく拡大させていく段階へと進めていきたいと考えています。

その他 [ゲームコンテンツ分野・VR分野]

 ゲームコンテンツ事業は、PlayStation®VR向け「DARK ECLIPSE(ダークエクリプス)」を欧米でリリースしたほか、新たな顧客開拓に向けた女性向けの新タイトル「Op8♪(オーピーエイト)」をリリースしましたが、目標数値に至らず、厳しい状況が続いています。ともにアプローチはよかったとの認識ですが、遅れをカバーしたい、結果を得たいとの焦りからサービスインの時期を優先し、完成度が低い状態でリリースしてしまったことが客離れを起こしてしまった結果だと分析しています。
 従来、ゲームソフトやエンターテインメント関連の事業では、実際にエンドユーザーに事前体験いただき、問題点を洗い出して修正してからリリースしてきましたが、近年はそのステップを若干省略してきたきらいがあります。これは当社が貫いてきた「顧客第一主義」「顧客ニーズを的確に捉え最高の満足を与えられる製品の提供」から離れ、お客様目線、プレーヤー目線が弱まってしまっていることを意味していると反省しています。
 第49期は改めて「お客様ファースト」をスローガンに掲げ、もっともっとお客様を重要視した商品作りを指向する、お客様の目線を大事にするという意思統一を改めて全社に浸透させながら取り組みを進めていきます。

機器販売からソリューション提供へ
「お客様ファースト」による事業拡張を目指す

代表取締役社長 木村 好己

 新規IT事業の立ち上げにあたり、従来の機器販売からソリューション提供が主力事業になってくるなかで、ゲームソフトやエンターテインメント関連事業のみならず、すべての事業において、お客様目線の意識を強く持つことが重要です。この意思統一のもと、第49期はこれまで取り組んできたことのさらなる拡張を通じて、脱皮する年にしていきます。
 モバイルデータソリューション事業は、世界的に拡大を続けるデジタル・インテリジェンス市場で影響力のある立場を堅持し続けられるよう、デジタルフォレンジック世界No.1の地位を堅持しつつ、周辺製品・サービスの開発に先行投資を継続し、プロダクトミックスを拡充しながら、業界をリードしていきたいと考えています。
 エンターテインメント関連事業は、市場環境の大きな変わり目を迎えるなかで、変化をチャンスとして捉え、新たな成長の道筋をつけていきます。
 また、ここまで大型先行投資を続けてきたIoT/M2M、AR、O2Oそれぞれの新規IT事業は、今後ますます注目が高まっていく大きな流れのなかで、一定の存在感を示すことができるよう、芽吹き始めた取り組みに花を咲かせ、成長軌道に乗せていきます。
 その結果として、増収はもとより、しっかりと利益を創出し、連結業績の黒字転換を果たしていきます。

第49期は実施してきた先行投資を
事業成長の成果に結びつける1年に

 当社グループは、経営理念の1つとして、「フレキシビリティとオリジナリティを武器に、ハードとソフトを融合させた、価値ある製品を研究開発し提供する」を掲げ、人々を幸せにする「情報通信&エンターテインメント分野におけるオンリーワンビジネス」を創造する研究開発活動を継続しています。いつの時代の社会にも必要とされる情報通信インフラ、人々の暮らしに豊かさをもたらすエンターテインメント、この両軸で社会に新たな価値を創造し、社会貢献し続けていけるよう、大きな流れを作り上げていきたいと考えています。
 第49期は大型投資の計画はなく、これまで種まきしてきた事業をしっかりと拡大させていくことに注力する、ここまでの将来成長に向けて実行してきた投資を必ず活かす1年とします。そうして事業規模を飛躍的に拡大させながら、企業価値を高め、株主の皆様への還元も充実させていきたいと考えています。サン電子の将来に改めて期待をお寄せいただくとともに、引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

木村 好己 プロフィール

1948年4月3日生(71歳)
会計士、税理士としてのバックグラウンドを持ち、国内外の監査法人やコンサルティングファームにおいて、ベンチャー企業への投資・育成、新規事業立ち上げや業績改善などの実績や企業経営の経験多数。
出身地:三重県
趣味:ゴルフ、ウォーキング、旅行、ガーデニング