特集2データで見る開示動向
新型コロナウイルス感染症の流行や東京証券取引所の市場区分変更、株主総会資料の電子提供制度開始など、この数年間で開示の在り方は大きく変わったと言えます。それに伴い当社を取り巻く外部環境も激変しました。しかし、それらの変化は当社にとってリスクだけではなく、多くのビジネスチャンスをもたらしました。今回は直近数年間の開示の世界における変化と、当社への影響についてご説明します。
招集通知電子化初年度の各社の対応と当社への影響
2022年9月に改正会社法が施行され、2023年3月に株主総会を開催する会社より、招集通知の電子提供制度が開始されています。この制度の開始により、株主総会資料(招集通知など)を自社ウェブサイトに掲載し、当該サイトのアドレスなどを書面で株主へ通知(以下、アクセス通知)することで、株主総会資料を提供することが可能となりました。これに伴い、企業は従来通り株主総会参考書類などのすべてを書面により交付するフルセット・デリバリー(以下、フルセット)、一部頁を抜粋して掲載するサマリー版(以下、サマリー)、アクセス通知の3種類から選択して株主に招集通知を送付しました。
● 2023年3月期決算上場会社の電子化への対応
3月決算企業の送付形態別割合

2023年3月期決算上場会社においては、プライム市場上場企業のうち半数以上がフルセットを選択。フルセットで送付する企業が多かったのは、制度開始初年度ということもあり混乱を最小限に抑える意図があったと考えられます。他の決算期の企業やスタンダード、グロース市場に上場している企業においても同様の理由からフルセットを選択する企業が優勢でした。
また、電子化に伴いHTML版の招集通知「ネットで招集」も好調で、前年度から導入企業数は増加しました。引き続き、「ネットで招集」をはじめとする会社法ICT商材のさらなる拡販を進めてまいります。
電子化後も株主とのコミュニケーションをサポート!
ネットで商材シリーズ

議決権行使プラットフォームへのリンクや総会会場への地図表示など、ウェブならではの利便性を高める機能を用い、企業と株主の建設的な対話を促進します。

株主通信のオンライン版。関連サイトへのリンクや動画等のコンテンツを設置することで企業理解を促進します。

ハガキでのアンケートではなくウェブ上で実施するもの。スマートフォンから手軽に回答することができ、集計も自動でできるため利便性と効率化を実現しています。

オンデマンド配信、ハイブリッド出席・参加型から、バーチャルオンリー型までバーチャル株主総会を支援しています。

eギフトの発行から送付まで一気通貫で支援。株主優待電子化システムにより、株主優待の選択肢の拡充と株主の利便性を向上しています。
コーポレートガバナンス・コード改訂の浸透と開示書類における英訳ニーズの高まり
2015年のコーポレートガバナンス・コード策定時に、「上場会社は自社の株主における機関投資家や海外投資家の比率等も踏まえ…招集通知の英訳を進めるべきである」とされて以来、招集通知の英訳率は増加傾向にありました。これに加えて2021年6月の改訂では、「特に、プライム市場上場会社は、開示書類のうち必要とされる情報について、英語での開示・提供を行うべきである」と示されました。さらに、2022年4月の東証市場再編の影響もあり、プライム市場上場企業はさらなる英訳開示の拡充を求められています。
● 日経225構成銘柄のうち、2023年3月決算企業の招集通知翻訳実施率

英訳版を開示した会社の内訳

日経225銘柄のうち、2023年3月期決算上場会社では、97%に当たる178社が招集通知の英訳版を東証HPに開示していました。前年と比較し大企業における英訳割合は横ばいだったものの、英訳範囲を拡大する企業が増加。178社のうち、57%の会社が事業報告・計算書類・監査報告の3項目を含める形で開示。プライム市場上場企業に対する英訳拡充を求める声は大きく、5項目全てを開示する企業も年々増えています。
● 2022年3月決算上場会社全社ベースの招集通知英訳実施率


3月期決算上場会社全社ベースの英訳版開示率も年々増加。2022年3月期決算では全体の49%にあたる1,157社が英訳版を開示しており、2023年3月期決算では半数を超えることが予測されています。
また、翻訳受注件数においても招集通知以外の商材の取込みによって、2023年5月期は過去最多の3,484件となりました。今後も有価証券報告書や統合報告書などの需要拡大が見込まれますので受注獲得に向け、訳者などの増員を図り体制強化を継続して進めてまいります。

- ※2021年5月期よりサイマル・グループで受注したディスクロージャ―翻訳案件も含んでおります。
サステナビリティが開示に与える影響
財務情報と非財務情報を結合し、中長期の戦略とともに説明する統合報告書の発行企業数は毎年増加傾向にあります。2022年12月末時点の統合報告書発行企業数は昨年同時期から154社増加の872社となりました。
統合報告書発行企業数

- ※「JPX日経インデックス400対象企業」「日経225対象企業」「JPX上場会社ESG情報WEB掲載企業」「時価総額1,000億円以上の企業」のほか、研究室の調査活動で確認できた企業その他法人を対象(学校法人を除く)。
- ※「狭義の統合報告書」とは、統合報告フレームワークなどの統合報告ガイダンスを参考にして制作されている報告書、または冊子やWEBサイトでレポート名を統合報告書・統合レポート等と題されている報告書を指す。
● 統合報告書発行企業の傾向
業種別発行割合

従来、統合報告書の発行主体は大型株の中でも製造業が中心でしたが、2022年の調査では49.4%となり、半数を下回りました。これは地方銀行や新興IT企業の作成活発化などにより、非製造業の発行割合が高まったことが要因です。
加えて、2023年3月期決算から有価証券報告書において女性管理職比率などのサステナビリティに関する取組みの開示が義務化され、非財務情報の拡充が加速。サステナビリティ情報開示は今や業種を問わず重要視され、自社の取組みや方針を伝える統合報告書への注目度は高まっています。
今後も中小型株や非製造業の発行は増加していくとみられ、統合報告書作成支援の需要も好調に推移することが予想されます。引き続き統合報告書自体はもちろん、英訳やコンサルティングといった周辺領域のニーズに対してもグループシナジーを発揮し対応してまいります。