トップインタビュー生産領域にも取り組む
「食のバリューチェーン」構築により
地域社会の活性化と
持続的な成長を実現します

イーサポートリンク株式会社
代表取締役会長 兼 CEO 堀内信介
代表取締役 社長執行役員 兼 COO 相原徹

Q1. 自社を取り巻く環境における中長期的なリスク・機会の認識について教えてください。

堀内賃金の上昇や個人消費を支える購買力の高まりを背景に、日本経済は緩やかな回復を見せています。一方で中東情勢の影響により、原油価格の上昇などが企業業績の下押し要因となる恐れがあり、特に当社においては農業用資材、販売用梱包資材等の調達への影響が懸念されます。パックで販売していたトマトをばら売りにするなど、販売形態そのものが変わっていく可能性もあります。

この影響は国内に留まらず、バナナなど輸入青果物において取引のあるASEANにも及び、産地から港までの輸送用トラックを動かす軽油が不足し、輸出量が減る恐れがあります。現状、当社の 「輸入青果物サプライチェーン事業」において直接の影響はありませんが、長期で続けば一定の影響も考えられます。

一方で現在、生鮮青果物のサプライチェーンにおいて大きな影響を及ぼしているのが、日本社会の構造変化です。少子高齢化による労働力不足、生産者の高齢化などの影響は大きく、青果物の供給不足となることが想定されています。さらに輸入競争における通貨の競争力が失われており、中央卸売市場経由では十分な青果物等が手に入らない時代になりつつあります。これは地域社会の維持にもつながる課題です。

当社はこれまで培ってきたシステムと人によるサービスを活かし、変化する環境に柔軟に対応できる強みを有しています。そのため、この青果物サプライチェーンにおける社会的な課題においてこそ、解決手段を提供することによる成長のチャンスが存在していると考えています。

Q2. 認識されているリスク・機会に対する、中長期的な経営戦略について教えてください。

堀内私たちの事業の根幹には、 「全ては生産者と生活者のために」という経営理念があります。生鮮青果物を中心とした食品の生産・流通・販売という事業を行う中で、真の主役である生産者と生活者のために何ができるのか、2021年からスタートした構造改革を通じて、社員全員で考えながら取り組んできました。

現在は中期経営方針に基づく取り組みとして、『小商圏』における地産地消の強化や、従来の小売主導ではない、生産者と販売者による双方向のコミュニケーションの創造に寄与するシステムの構築およびサービスの展開を進めております。

一方で生鮮青果物の流通量の減少は想定より早く課題として顕在化しています。播種定植から収穫までの情報を共有化し、供給された青果物をどのような形で生活者の方に提供すれば喜んでいただけるのか。それらを瞬時にデザインする仕組みが必要になっており、そのような意味で、当社の次の目標は明確に見えています。これまでバリューチェーンの構造を考える中でシステムを構築してきましたが、もう一つ、生産という局面に少し重きを置いた形での構造を新たにデザインする会社を目指したいと思っています。

Q3. 中期経営計画の折り返し地点を迎えた現在、取り組んできた施策の進捗について教えてください。

相原当社の主力事業は生鮮MDシステムと輸入青果物のオペレーション支援事業で、収益の大半を占めています。この安定収益部門は堅持した上で、第三の収益基盤を構築するというのが、中期経営計画の骨子です。そのために3年間で最大約30億円の投資を行い、持続的な企業成長を目指しています。

幸い、既存事業は当初の計画以上に安定的な収益化ができており、新規事業である「es-Marché(エスマルシェ)」や後述する 「Marché+(マルシェプラス)」も順調に拡大しています。この他、フィリピンのバナナ農園におけるリモートセンシング技術開発プロジェクトもスタートしました。現在、小規模農園を対象に実証実験を行い、将来的には地元自治体への技術導入を目指しています。

また国内の農産流通についても、新たな成長に繋がる施策を進めています。生鮮品特有のノウハウを持つ当社ならではの取り組みとして、青果物の商品データベースの構築を進めております。産地や品種ごとに異なる複雑な商品情報を当社が一元管理し、生産者から小売まで必要な情報を的確につなぐことで、現場の業務負荷の軽減と流通全体の効率化を実現してまいります。

我々のミッションは、流通プロセスに生じる煩雑な手間を、システムの力でいかに解決するかだと考えています。これは青果物に限らず、物流の分野でも同様です。物流分野では、鮮度維持や小口多頻度配送など生鮮品特有の課題に加え、2024年問題による輸送能力の制約も深刻化しています。集荷から納品までの情報を可視化し、サプライチェーンに携わるプレーヤーが情報を共有できるプラットフォームの開発を進めています。まだ研究段階ですが、将来的には相当な価値を生む仕事だと期待しています。

業績計画については、今期は売上高70億円、経常利益2.2億円を計画していますが、足元では順調に進捗しており、下期に向けて、さらなる事業の伸展を目指してまいります。検討段階にある施策につきましても、具体的な内容や時期が固まり次第、株主の皆様にも順次ご紹介してまいります。

Q4. 現行の中期経営計画を推進する上で、特に重要だと捉えている課題について教えてください。

相原現在最重要課題と位置づけているのが、人材の育成です。特に次世代を担うリーダーの育成は、当社の持続的な成長を実現するうえで欠かすことのできない、大きなテーマです。

この取り組みは数年前より着手しており、指示を待つ受け身の姿勢から、自ら主体的に成果を追求する意識への転換を図ってまいりました。こうした取り組みの延長線上に、今年度における人事制度の抜本的な改定があります。従来の年功序列型の制度を廃し、業績と連動した昇進・昇給を基本とする、成果主義に基づく新たな人事制度へと移行いたしました。この制度を定着させるべく、特に中堅層の社員を対象に、多様な研修プログラムを継続的に実施しています。

こうした施策を地道に積み重ねてきた結果、近年、社内の雰囲気が大きく変わりつつあることを肌で感じています。風通しの良い職場環境が醸成され、社員一人ひとりが自由に意見を発信できる、活気ある社風が育まれてきました。年2回実施している社員エンゲージメント調査においても、スコアは着実に向上しており、これを大変心強く受け止めています。

今後も様々な施策を講じながら、次世代を牽引する優れた人材の輩出に向け、全力で取り組んでまいります。

Q5. 中期経営計画の最終年度に向けて、注力したい取り組みについて教えてください。

相原新事業収益化の加速に向けて、全力で進んでいきたいと考えています。

まず「es-Marché(エスマルシェ)」を通じた地域の生産者・消費者・小売をつなぐ仕組みをさらに拡充しながら、関東圏を中心に展開エリアの拡大を目指してまいります。大規模産地から大消費地への流通モデルが限界を迎え、市場仕入だけでは安定的な調達が困難となる未来が見えてくる中、地場調達は重要な選択肢となり、「es-Marché(エスマルシェ)」はその仕組みを支えるものとして位置づけています。「Marché+(マルシェプラス)」は導入店舗数の拡大と、1店舗あたりの日販の向上を両輪に、ドラッグストアにおける青果売場の存在感をさらに高めるべく邁進します。

そして農業支援事業の拡大については、生産へと入り込んでいく事業という観点からも注力してまいりたい取り組みとなっています。現在、国産青果物販売事業の中で、主力商材であるさつまいもの販売が伸びています。東南アジアを中心に輸出需要が拡大しており、当社が調達するさつまいもの7割が輸出用です。さつまいもの多様な用途が広がる中、実際にさつまいもを栽培する協力会社においても耕作地の拡大による増産が進んでいます。当社が仕入と販売を担うことで、生産者が安心して事業拡大に取り組める環境を整えています。これは意欲と能力のある生産者を支援する取り組みの1つともなっています。

また、AIの活用は待ったなしです。例えば今後、「Marché+(マルシェプラス)」の契約店舗が増えた時、当社のSV(スーパーバイザー)が全店を巡回して売場の点検をするには限界があります。こうした場面では、AIを活用した売場診断などが有効になるでしょう。これは他の事業でも同様です。AIで企業価値向上を目指すというレベルではなく、使わないことで競争に取り残される。そのような時代が来ている今、より効率的な経営を目指したAIの活用に積極的に取り組んでまいります。

Q6. 株主の皆様へのメッセージをお聞かせください。

堀内今年、当社は創業25周年、上場20周年という記念すべき節目の年を迎えます。ここまで歩んでこられたのは、ひとえに株主の皆様をはじめ、生産者・取引先・お客様など、多くの方々のご支援とご信頼があってのことと、深く感謝しております。
日本および世界の農業のあり方、AI技術の進化、地政学上リスクなどを踏まえ、生鮮青果物のサプライチェーンは大きく変化しています。その中で当社はこれまで培ってきた土台をもとに、「地域の発展」および「持続可能な社会づくり」に貢献するという、2つのテーマを掲げています。構造改革をよりスピードアップし、生産者、生活者、流通に関わる方々をつなぐ、合理的で持続可能な仕組みの構築に取り組んでまいります。

当社は将来への事業投資とともに、株主の皆様への安定的な配当の継続を常に重視しております。引き続き、厚いご支援を賜りたく、お願い申し上げます。