トップメッセージ次世代の
「食のバリューチェーン」で
豊かな地域社会を築く
イーサポートリンク株式会社
代表取締役会長 兼 CEO 堀内信介
代表取締役社長執行役員 兼 COO 相原徹
2025年11月期上期の現況と通期見通しについて
堀内上期の経営環境を振り返ると、2024年12月以降、産地の天候不順による供給不足で野菜の高騰が続き、2025年に入ると米価の高止まりが大きな話題となりました。生産者の激減など、様々な理由で農産物の十分な供給ができないという状況が広がり、同時にドライバー不足などから産地での集荷や物流も滞り、非常に厳しい環境が続いています。
また当社の事業に大きくかかわる輸入青果物については、円安の影響で日本に入ってくる商品の品目数が減り、バナナ、パインなど大型商品が中心になっています。
このような環境下、当社の顧客であるスーパーマーケット、ドラッグストア業界は再編が加速しています。各社の方針や動向をすばやくキャッチし、当社の取り組みを顧客の求める形へとフィットさせていくという対応がより重要になっています。
上期における取り組みで注目すべきは、株式会社フロンティアから青果売場構築支援事業を譲受したことです。これにより当社のサービス導入店舗が約1,300店舗へと大きく拡大しました。当社事業としてのスムーズな移行に注力し、順調にスタートを切っています。
また流通の川上での価値を示すという観点から、生産事業を重要なビジネスと位置づけました。年々生産量が減っているりんごなどの果樹、そして付加価値が期待できる有機野菜を中心に取り組む生産事業会社3社を今期より連結対象にし、当社の事業の柱の1つとして育てるべく、中長期的な取り組みを始めています。
さらに現在策定中の中期経営計画を見据えて、この度、全社的な組織改革を実施しました。機能別組織へ組み換えるとともに、人材の適正配置を行い、新たな成長に向けて着々と準備を進めています。
相原当社の基幹事業であった輸入青果物サプライチェーン事業の環境変化に対応するため、2021年度から構造改革に取り組みました。約3年間で一定の成果を上げ、幹部社員を中心に事業創出マインドが高まっています。
変革の結果、通期の数値目標として掲げた連結売上高62億5,200万円、連結営業利益1億8,900万円に対して、半期を経過した時点では順調に推移しています。
青果売場構築支援事業は、事業譲受により今期約1,300店舗規模となりましたが、実際の運営に取り組む現場のパートナー企業とのコミュニケーションを深め、基本的なオペレーションの統合作業は概ね完了しました。今後のさらなる規模拡大を見据え、下期から新たな戦略がスタートしています。
まず売場の平準化に取り組み、全国どこのドラッグストアにおいても、一定の品揃えと鮮度感のある野菜、果物が並んでいるという状態を作るという目標を掲げています。そのためにパートナー企業との協働を深化させていくことが1つの指標になると考えています。
中期経営計画について
堀内現在、日本社会を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。まず我々の業界内でも切実に感じている問題として、就農人口の減少があります。野菜や米の高値が話題になっていますが、実は果実も大きく生産量が減り、数年前から価格が高騰しています。地球温暖化による気候変動も生産に影響を与え、安定供給という生産基盤そのものが揺らいでいると言っても過言ではありません。また米国の関税政策など、地政学的な変動も大きく、先の見えない状況が続いています。
このような環境下で中期経営計画を策定するにあたり、もっとも重要なのが、中長期にわたってぶれない当社ならではの経営の方向性を内外に提示することだと考えました。
当社は青果物流通を中心とした事業を展開する上で、「全ては生産者と生活者のために」という経営理念を掲げています。
今、少子高齢化と産業の空洞化で税収も減り、過疎地域では行政サービスの継続が難しいという状況になりつつあります。その一方で、食を担う農業を中心とした1次産業は依然として重要な役割を担っており、地域活性化に欠かせない産業として、維持・発展させていく必要があります。
この認識をもとに、中期経営方針として2つの柱を立てました。1つは「地域社会の活性化に貢献する」、もう1つは「持続可能な社会創りに貢献する」というものです。
1つ目の柱である「地域社会の活性化」については、青果物の生産・流通・消費に関する課題への取り組みを進めます。
従来、日本の農産物は主要産地から市場へ集約され、大消費地に向けて輸送されるという流通が中心でした。これを「人」と「システム」で支援することで、地産地消の流れを強化し、小商圏におけるサイクルの速いビジネスにフィットしたインフラを提供してまいります。
具体的にはドラッグストア向けの青果売場構築支援事業や、地場野菜調達支援サービス「es-Marché (エスマルシェ)」を通じて、地域活性化を促進してまいります。
2つ目の柱である「持続可能な社会創り」については、新たなコミュニケーションの創造がキーワードです。
これまでは小売側のニーズに生産者が応えるという一方通行のコミュニケーションが中心でした。しかし、これからは産地での播種、定植から生育状況まで、生産者と販売者が丁寧に連絡を取り合い、産地の状況に合わせた売場を構成するようなコミュニケーションが必要となります。
当社は生産事業の強化を通じてサプライチェーンの川上に関与すると同時に、川下側に向かって流通サービスを充実させてまいります。事業全体を力強く成長させながら、生産者の収益を増やし、生活者の暮らしを豊かにしていくことを目指しています。当社の事業そのものが、持続可能な社会創りに貢献するものであると確信しています。
新事業の展開をさらに強化する上で、人的資本の強化も重要なテーマです。自ら考え、行動に移すことのできる主体性を持った人材に期待し、従業員と会社の新たな関係を「期待と約束」という形で示した「人材ポリシー」を策定しました。教育や研修、よりよい職場作りなど、中期経営計画の中で具体的な施策を進めてまいります。

3つの基本方針・3つの事業戦略について
相原中期経営計画の中で3つの基本方針を掲げています。基本方針1つ目の「基幹事業収益維持」では、現地点で当社の収益の柱である輸入青果物サプライチェーン事業と生鮮MD事業の安定的な強化を狙います。新サービス機能の追加など、顧客の要望に応え、引き続き安定的なエンゲージメントを追求します。
2つ目の「積極投資」についての詳細は後述しますが、AI技術等を取り入れたシステム開発、専門スキルを持った人材採用と育成への投資は重視したい取り組みです。また、M&Aも成長の選択肢として考えています。引き続き検討してまいります。
3つ目の「事業ポートフォリオの組み換え」は、大量調達・大量販売時代の終焉を踏まえた取り組みです。域内流通を可能にする「es-Marché (エスマルシェ)」などを通して、新たな流通インフラの構築を目指します。現在の輸入青果物サプライチェーン事業並びに生鮮MD事業と肩を並べる事業にまで成長させることを目標としています。
次に、事業戦略については①流通課題解決戦略、②流通インフラ戦略、③農業ビジネス化戦略の3つの要素で成り立っています。
①については青果物サプライチェーンにおいて、最新技術を活用し、流通現場の合理化を図ってまいります。②は「es-Marché (エスマルシェ)」など域内流通のMD(マーチャンダイジング)で、地域の流通プロセスを支えるインフラを提供します。③はりんご・さつまいも事業や有機農作物販売など、当社が直接、生産事業を手がけ、安定流通を目指します。
投資方針について
相原2025年11月期は10億円の投資枠を設定し、策定中の中期経営計画においても成長のための投資拡大を予定しています。
すでにAIを活用した画像解析など技術検証へのチャレンジを開始しており、重点的な投資案件に位置づけています。
小売店舗内の生鮮食品売場の画像を定点観測し、AIで解析したデータを活用することで、売上を最大化する売場作りをサポートするシステムの構築を目指し、現在、実証実験を行っています。
また、海外のバナナプランテーションにおいては、生育状況や病害の有無などを人の目でチェックしていますが、広大な農園では完璧なチェックは難しく、そのための人材も不足しているのが実情です。そこでドローンによる空撮画像をAIが解析し、これらを自動判別するシステムによる生産管理サービスを提供することで省人化、チェック精度の向上を目指しています。今期中のサービスインを目標に、現在フィリピンで実証実験を重ねています。

株主の皆様へのメッセージ
堀内株主の皆様との建設的な対話と密接なコミュニケーションを図るべく、この度、株主通信をインターネット上で発信する運びとなりました。
当社は中期経営計画をもとに新規事業に取り組み、成長を加速すべく事業運営に邁進いたします。また企業体質の強化と成長投資に向けた内部留保を確保しつつ、継続的な株主還元を経営課題と捉え、将来の充実に向けて努力してまいります。
引き続き、皆様の温かなご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。